劇団「キットハンサム」を主宰している河野賢(さとし)さん(34)はこのほど、初のワークショップを開催する。「役者や演劇の関係者だけでなく、仕事帰りの会社員やOLさんといった人たちにも参加してほしいですね」。外国ではカルチャースクール感覚で一般の人の参加も多い演劇のワークショップ。「“エクスペアリアンス”を大切に。上手いとか下手ではなく、参加者に実際に体験してもらって、感じてもらえることをもっとうに行っていきたいです」と意気込みを語る。なぜか長髪で。そんな髪型でしたっけ? 代表。(文責:吉田直人)
河野さんは“恥ずかしがり屋”な男の子だった。
「役者とマラソン選手には絶対なりたくない」。
子どものころから注目を浴びるのが好きだった人、テレビに出て芸能人と会ってみたかった人、親兄弟が役者で自然になった人…。どちらかと言えば“人から見られること”に抵抗がない人が役者になるというイメージがある。ところが河野さんは違う。病弱で“恥ずかしがり屋さん”だった彼は「マラソンなんてつらいことと、役者みたいに人から注目される仕事だけは絶対にいやだ」というチャーミングな言葉を残している。
ならば、なぜ彼は役者となり、劇団「キットハンサム」を主宰するに至ったのか。
男子のサクセスストーリーに格闘技はつきものだ。河野さんもご多分にもれず、空手を始めたことによって強い男の階段を上り始め、空手で大学へ進学まで果たしてしまう。「きっかけは中学校のときにバスケットボールをはじめて“俺、意外に動けるな”と思ったこと。そのうち、純粋に“強さ”に憧れるようになって空手を始めました」敵を倒すという意味の強さではなく己の弱さに挑むという強さ。とはいえ、強くなった河野さんは、彼の愛車を盗んだバイク強盗を発見し戦ったこともある。「間合いをとれたり、防御ができたときに、“空手やっててよかった”と思いました」。
空手まっしぐらからなぜ演劇へ? 時代は中学時代へ遡る。「学園祭で『友情のカンニングペーパー』という劇をして、みんなで作り上げていく楽しさに対する憧れを持ち始めたことが最初だった」。空手で入った大学だったが、そのころから空手よりも演劇に興味が出てきてしまった。時は80年代、丁度“小劇場”というムーブメントが盛り上がってきた時代だった。「今、実際にやってみると、憧れとはずいぶん違うなーと思いますけどね」。
役者の道を歩みはじめた河野さんは、大阪での活動の後、上京。「北区つかこう
へい劇団」のオーディションを受け、舞台に出演するなど勢力的に活動。その後所属した才賀京子事務所時代の2000年に劇団「キットハンサム」を一人で立ち上げる。
「劇団じゃねーじゃん!」とつっこまないでほしい。現在はほかにもメンバーがいる。敏腕でべっぴんさんのマネージャーさんまでいる。羨ましい。幣誌にもそんなマネージャーさんがほしい…「東京ふつうの人新聞」では“マネージャー”を募集いたしま……失礼、話しが逸れてしまいました。とにかく最初は河野さん一人で立ち上げたのだった。一人芝居を始めると“キットさん”などと呼ばれるようになる。
演劇畑を歩いてきた河野さんは、現在の「小劇場」というものをどう見ているのか。
「未熟な分野だと思いますね」。
少し考えて、彼は答えた。「そのわりに、一部はマスコミなどに出て有名になっていたり、華やかなイメージがある。小劇場っていうのは、もともとは河原乞食のようなものだったと思うんですよ。もう一回河原乞食に戻ったら、淘汰されていくと思う」。自分の作りたい演劇と商品としての演劇への昇華。作り手とは常にその葛藤の中をたゆたむ存在なのだ。
役者のほかに、「健康運動指導士」の資格を持ち、普段はインストラクターの仕事もしている河野さんに、「ふつう」ということはどういうことか聞いてみる。
「演劇の視点で考えると、“ふつう”って言葉は使わないようにしていますね。『ふつうに○○して』みたいな指示を言われると疑ってしまう」と話す。「言葉としての普通は…やはり、どこかでちょっとよくないニュアンスを感じます。ただし、“ふつうの基準”というのは必要で、私の場合、“恥ずかしがり屋で気弱な男の子”の感覚が役に立っていると思う」。
「生きるということの要素の一つに、“己に勝つ”というものはあると思う。コンプレックスを克服するみたいな。公演をやるときも、“成功”“失敗”もないと思っている。それ意外の成果というか新しいチャレンジをしたいと思っているから」。
“芝居をしていてマイノリティであることだけで満足している心境は乗り越えた”と話す河野さん。「今は自分がやっていることのジャンルで、いかに社会の中で挑戦していけるかが大事」。社会の中で何ができるか。今回のワークショップにもそんな“挑戦”が含まれているのだろう。
河野さんのように他に仕事を持ちながら役者などの活動をしている人は珍しくない。同じ活動でも、関わり合い方のスタンスは人それぞれ、多様化している。
「“やりたいことをやっていていいな”と言う人がいるけれど、“そう思うならあなたもやればいいじゃん”と思う。やっているほうはリスクを背負ってやっている。ネガティブにそういう発言をする人はリスクを回避した人。“ふつうの人”とか“ふつうの人じゃない”とかは、ここでは関係ない」。
経験に裏打ちされた言葉は重い。
かつて“恥ずかしがり屋”だった男の子は現在、凛々しい大人の男となって、堂々と語るべき言葉を持っている。
でも写真撮影のときに、わざわざ長髪になってくださるときの表情に“恥ずかしがり屋”の一面が顔を覗かせる。そんなギャップがあるところが、
キットハンサム!!
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一生遊べるよ!!
【略歴】1974年4月16日生 大阪府松原市出身/東京都杉並区在住 松原市立甘美西小→松原市立第五中→私立浪速高→桃山学院大学経営学部中退、アルバイトをしながら役者→某事務所に所属、2000年に劇団「キットハンサム」立ち上げ→劇団「東京乾電池」研修生(1年間) 【星座】おひつじ座【血液型】B型【家族構成】妻、子、亀3匹(リュノスケ、リンタロウ、キンゴ)【趣味】テレビゲーム【好きな食べ物】レバー【嫌いな食べ物】クリームシチュー、おでんetc. 【お気に入りスポット】高井戸の「美しの湯」【特技】空手【座右の銘】文武両道【子どもの頃の夢】冒険家












