夏休みが終わった。小学校では七月後半から八月終わりまでの無駄に過ごすべき貴重な休み。学校が休みの間、先生達は何をしているのだろうか。「夏休みだから暇だと思ったら大間違い。水泳教室の当番、希望制の学習教室の実施、教員の研修、普段に比べれば多忙ではないが、それでもやることはたくさんある」。小学校教員・石田彰洋(28)は言う。読者の中には自分が授業を受けた先生の年齢に達しようとしている人もいるのではないだろうか。あの時、あの先生は何を考えていたのだろうか。(文責:渡辺タケシ)
「普段は4時半に起きて6時半に出勤。授業の組み立てをして8時40分から朝の会を始める」。一時間、45分の授業。「その授業でどこまで授業を進めるか、クラスの一人一人のことを考えて」授業を組み立てる。夜も遅い時は22時まで仕事が及ぶ時もある。「名簿作りや採点といった事務的な仕事には時間をあまりかけたくない。どうしたら子供達が楽しめるか、行事に積極的に参加してくれるかっていうクリエイティブな側面に時間をかける」。例えば、勉強を分かりやすくするためにワークシートを作製したり。教員デビューして6年目になる。全ての教員がそうであるとは思わないが、かつて自分が受けていた授業にはこんな苦労、時間が割かれていたかもしれないと思うと驚いてしまう。
「学校の給食のカレーが大好きだったのが教員を目指したきっかけだった」。「中学校の授業の時、授業がつまらなくて、じゃあ、俺がやるか、って思ったのもきっかけだった」。早くから自分が教員になることは決めていた。高校は普通科、大学は一浪して教員養成を目的とした教育学部に進学する。第一志望の大学に進学できたわけではなかったが、それに対して特段コンプレックスはないと言う。「受験の失敗とか挫折は今までいろいろあったと思うが気にしない。寝ればなおる」。
大学時代は友達と馬鹿なことばかりしていたという。「脱衣リフティングをやったりした」。これは文字通りリフティングに失敗するたびに服を脱がなければいけない遊びだ。「裸になったらそのまま校舎を一周しなきゃいけなかった」。「俺は馬鹿だからさ」と、自分を笑うが、それは素直で一直線でいる石田さんの印象に繋がる。小学生と共有しなければならない大切なフィーリングではないだろうか。「高学年になると人の目を気にしだす。喜んだりするのを人目に負けないで表現して欲しい」。
今まで6つのクラスの担任をしてきた。安定しているクラスもあれば不安定なクラスもある。学力低下、学級崩壊、小一プロブレム、緊急保護者会、転校、転入。クラスの中には、また、外にもいつも問題は山積みだ。しかし、「子供達は期待している。楽しいクラスと楽しくないクラスだったら一人も楽しくない方がいいと思ってはいない」。ただ「水と同じように低いほうに流される。みんなの目を気にしてなにもできない子も多い」。
はじめは騒がしくて授業にならないクラスもあった。先生が「解決をすることはできない。クラスはみんなが作るものだから。きっかけを与えたり、アドバイスをすることはできるけど、アクションを起こすのは子供達」だという。「一対一だと挨拶ができるけど、集団になると周りを見てできなくなる」生徒達もいる。そういう中では逆に「集団の力を使う。先生が悪い事をした子を叱って、悪い事がいいと思うかどうか子供達に聞く。そうすると誰も手はあげない」。そうやって認識させて、少しづつ良くしていく。そのクラスでは七夕で多くの生徒達が短冊に将来の夢を「先生」と書いてくれたと言う。
小学生は敏感だ。相手が嫌々やっているのか、嘘をついているのかすぐに見破る。石田さんは「面倒くさい時もあるけど」「好きな事を仕事にできて幸せだと思う」という。「お金とかの問題じゃない」。60歳近くの教職、団塊の世代が一斉に退職を向かえようとしている。管理職に進む道もあるがあくまでも現場で子供達と接する事を望む。「一日一日むこうも成長しているのがわかる。パソコンに向かって仕事をするのだけではなく、子供と一緒に成長して自分も高められる」のがこの仕事の醍醐味だと言う。「自分が子供と共感を持てなくなったり、自分の伝えたい事が全く伝わらなくなったら、その時は潔く教職を辞めようと思う」。
自宅には生徒から何通もの暑中見舞いが届いていた。初めて担任したクラスの卒業生は今でも遊びに来てくれるという。「今、高一なんだけど、女の子はギャルになってて、化粧しない方がいいぞ、なんて言うんだけどね」。「見た目は変わったけど、本質は変わってない」。生徒が卒業しても来てくれるのはやっぱり「うれしい」。
生徒達には「他人の事を考えられるような大人になってほしい」。「自分の悪さが見えなくて、人の悪さばかり見える人ではなくて、自分の弱さを見て、人の良さをいっぱい見える人になって欲しい」。「昔はきれい事のような、子供の心に残るような先生、とか言ってたけど、そんなのおこがましいよね」。自分の伝えたいことを伝えるのに「1年が勝負」だという。「自分の存在は忘れてもいいけど、そのメッセージは覚えててほしい」。
新学期が始まった。夏休みは先生を驚かす成長をするには十分な期間だろう。石田さんは生徒達に何かを教える、というよりは、子供達と何かを一緒に楽しむ、というスタンスで授業に望んでいる気がする。また、教室で生徒達と机を並べる日々がはじまる。
これから先、先生の顔は忘れるかもしれない。でも、そのメッセージは間違いなく残るのだろう。今まで忘れかけていた、あの先生、この先生、がおぼろげに思い出される。確かにおぼろげだけれども、そのメッセージは確かに自分の何かになっていた気がする。
友達
友達がいるからやっていける。大切。
【略歴】1980年3月9日生、大阪府出身、東京都在中、東京都立神代高等学校→文教大学教育学部→小学校教員【星座】魚座【血液型】A型【家族構成】父・母・姉【趣味】バスケ、ギター、旅行【好きな食べ物】カレー【嫌いな食べ物】ない【お気に入りスポット】自宅【尊敬する人】両親【好きなタイプ】おもしろい人【合わないタイプ】感動を一緒に味わえない人【子どもの頃の夢】仮面ライダー、ウルトラマン












