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「自分のことをマイナーだと思っている、全ての人へ」

「あなたは、ふつうの人ですか?」。
現代においては、価値観の数だけ“ふつう”はあり、個人個人でその解釈にもギャップがある。つまり、誰もがマジョリティ(多数派)であり、マイノリティ(少数派)な存在になりうる。
『東京ふつうの人新聞』とは、そんな“ふつうの交換不可能な個人”を紹介していく、まったく新しいスタイルのWEB新聞です。そうすることで見えてくる、現代の「ふつうの人を再定義」していきます。

司法書司事務所勤務 山科勝司さん ガムラン

「みんなが性について悩んでいる思春期にオレは頭の形で悩んでた」。確かに、山科さん(31)の頭の造形は情緒が深い。くぼんでたり、歪んでたりする。見た目は非常に妖怪っぽいと言っていいかもしれない。例えるなら「ぬらりひょん」。「ぬらり」は滑らかな様子、「ひょん」は奇妙な物や思いがけない様子を意味する。忙しい夕方時にどこからともなく家に入ってきて自分の家のように振舞うと言われている。実際に山科さんはそんな事はしないが、何か共通点を感じるチャーミングな人だ。(文責:渡辺タケシ)

「KYって呼ばれてた時期があった。オレはイニシャルが山科(Y)勝司(K)だから単にイニシャルで呼ばれてるのかと思ってたけど、流行語大賞を見てびっくりした」。山科さんは司法書士事務所に転職したばかり。仕事の傍らインドネシア民族音楽ガムランのアシスタント講師もしている。この現状までの職歴は荒れている。造園会社に3年勤めた後は会社を転々とする。「興味深い社名だったから」と言って入社し1ヶ月で退職した会社もある。本人曰く「タイミングが悪い、とか、間が読めない、とかよく言われてた」。

長崎県長崎市にて生まれる。造船所で栄える街だ。港には何艘のも大きな船舶が停泊する。そんな街で山科さんは海と船を通り越して音楽という文化に魅せられてしまった。「小学校の時にF1の中継でT-SQUAREカシオペア(ジャンルでいうとフュージョン)に興味を持った」。10歳の時にCDレンタル屋でカシオペアと間違えてジョン・コルトレーンのCDを手に取った時に音楽好きの道は決まってしまった。「あれが間違いだった。自分の音楽への入り口だった」。

音楽は少年の心を捉えた。「長崎には音楽仲間ができなかった」という。「高校では柔道部だったけど、みんなT-BOLANとかを聞いてた」。山科さんの音楽の関心はJポップの領域を超えていた。ジャズ、フージョン、ロック、テクノ、アンビエント、民族音楽。「もっと音楽を聴きたい」。大学は2浪の末に東京の大学に入学する。サークルは山下達郎、宮沢和史も属していたと言われるサークルに入る。しかし、このサークルもくせ者団体。「暗黒音楽サークルだった。マイナーで誰も見向きのしないものをみんな好んで聴いていた」。ゼミに関しても教養ゼミにて民族音楽を専攻する。まさに音楽三昧の大学生活だ。

卒業から7年経つが今は当時のゼミの教授の家に居候している。6畳間の壁2面がレコードに埋め尽くされた部屋だが、音楽好きにとっては天国のような部屋ではなかろうか。「人間は音楽がなくても生きていける。でも音楽を聴く余裕がない人は異常だと思う。その辺に音楽の意義があると思う。お金とか仕事だけだと人間らしさがないと思う。言葉にならないけど、その辺の境目にあるのが音楽だと思う」。

そんな音楽を聴く余裕とは裏腹に、タイミングや間という、解決しがたい悩みも抱えている。「直しようがないとも思ったけど、諦めたくなかった」。諦めない結果、出会ったのは易経だった。易経とは占筮に用いられる書物であり、儒教の基本テキスト五経の筆頭に挙げられる経典でもある。中国三千年の占いの知恵を体系化し組織化し、深遠な宇宙観にまで昇華させている。人生の可能性を天・沢・火・雷・風・水・山・地の8つの要素を掛け合わせた64の卦で占った。

「2年前に偶然読んだ。人の運勢のサイクルが書いてあり、自分で察知できるようになると知って自分の中で1番だと思った」。岐路に立った時は自分で易をたてることもあるという。

この卦というのは一つ一つが様々な意味を含んでいる。「自分というのはどういう人間なのか占った事がある。そうしたら水風井だった。」水風井というのは水と風の要素をかけあわせた卦である。「井」は井戸であり、それは村人達が集まるところであり、水を施す場所という意味。だが、水を汲み上げる努力を忘れては井戸の水は汚れてしまう。「自分が潤うだけでなく人々の為に奉仕することを忘れてはいけない」。

司法書士事務所への転職は成功した転職だった。給料は前職の2倍になった。これは年齢的平均年収に至ったということ。「前の仕事はどん底だと思ってた」。この転職では易はたてなかった。「待遇も上がるし迷いはなかった」。公私ともに充実した時期に至っている感じがあるが、「井戸がきれいだって油断した隙に汚くなるもの」と慢心はない。

易とガムランは似ているという。それは一周してもとに戻っていく点。易の64卦もガムランの曲もぐるぐるとループする構造になっている。「いい時があって、悪い時があるもの、そういう循環している感じがいい」。ガムランは「日本にもあったらいいと思うし日本人に合っていると思う」という。その気持ちが講師としての立場にもなっている。「自分の楽しいと思う音楽を教えて楽しんでもらえたらいいと思う」。

「ふつうじゃないってよく言われるけど、ふつうじゃないのかな」。逆に聞かれてしまった。この新聞の趣旨は交換不可能な個人だ。「そうだよね。みんな普通じゃない、みんな面白味がある。何事に関してもわからないと言って切り捨てたりしたくない」。井戸の卦が出るはずだ。切り捨てないで続けていく、そして周りの人間に奉仕することを続けた結果が今の実りだろう。

長崎出の音楽妖怪山科は、間が悪く、悩んだり、遠回りをしているところがあって、だからこそ人間臭い人だった。山科さんがふつうじゃないと言われるという事は現代人というのは多少、機械らしいところがあるくらいがふつうなのかもしれないとも感じた。

ちなみに、最初の職場である造園屋の退職理由は「木がかわいそうで切る事に耐えられなかったから」だそう。だったら、なぜ造園屋に就職したのか。しかし、何とも優しい人だった。

座右の品

易―中国古典選

(朝日選書)


自分の運が悪かった時にすがるのは占いとか宗教だと思う。オレはたまたまこれを読んだ。

プロフィール

【略歴】1976年8月5日生、東京都大田区田園調布在中、長崎県長崎市出身→長崎県立長崎南高等学校→明治大学政経学部経済学科→長久保造園土木(3年)→空間コンストラクション(1ヶ月)→トムガーデン(1年)→ビック測量設計(1年半)→篠原司法書士事務所【星座】獅子座【血液型】B型【家族構成】父・母・弟【趣味】音楽の演奏、鑑賞、読書【好きな食べ物】【嫌いな食べ物】ない【お気に入りスポット】目黒清水池公園【尊敬する人】江波戸昭【座右の銘】おもしろ地図を広げよう【好きなタイプ】あたまのいい人【嫌いなタイプ】善人ぶってる人【子どもの頃の夢】新聞記者、潜水艦乗り

【告知①】 山科氏が参加しているガムラングループ。毎月第1第3日曜にミングーガムランという、ガムランに触れたことのない人も対象にした講座を浜松町のスタジオで開いています。また、7月にワヤンという影絵芝居の公演を予定しています。
詳細、お問い合わせは、ランバンサリのHPで。

【告知②】 日本・インドネシア友好50周年記念事業

第10回記念 ガムラングループ・ランバンサリ自主公演
「青銅音曲10ジャワの影絵とガムラン」
ワヤン・クリ「アルジュノの饗宴~マハーバーラタより」

ダラン(人形遣い):プルボ・アスモロ
演奏:ガムラングループ・ランバンサリ

2008年 7月18日(金) 19:00開演(18:30開場/前奏曲演奏)
7月19日(土) 15:00開演(14:30開場/前奏曲演奏)
日暮里サニーホール
入場料(全席自由):前売 3,000円/当日 3,500円/小学生 1,000円

チケットお申し込み・お問い合わせ:
ランバンサリ事務局 Tel&Fax: 03-5300-6361 (担当:木村)
E-mail: office@lambangsari.com

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