「俺の人生は何にもないよ。普通だよ」。はじめはそんな風に言っていたのに、最後の方には「人からよく普通じゃない、って言われる」、そんな風に言っている。いい加減なのか、他人からと自分からの自分の評価が違うだけなのか。高橋一平さん(28)は年齢的にもこれから一番働ける時期に入っていく年齢だ。そして、彼が働いている業界は今大きな進展を起こそうとしている業界でもある。(文責:渡辺タケシ)
ATP(Advance Technology Prodacts)エレクトロニクスというのは台湾に本社をおく法人だ。現在、高橋氏が勤めている会社はその日本支社にあたる。取り扱っているものはフラッシュメモリ(SDカード、CFカード、マイクロSDカード、USBカード)。ピンとくる人はくる、こない人はまったくこない商品類だと思う。それらはデジカメ、携帯電話、パソコンに使われるメモリカードの事だ。
「将来的にハードディスクに取って変わるもので、マイクロSDカードに関しては先月から4GBの商品も出て、今年中には通常のSDカードタイプのもので32GBの商品も出る」。マイクロSDカードは大きさで言ったら枝豆くらいの大きさだ。そのなかに今の時点でipodで言えば1000曲の情報が詰められる。そして、今年中には8000曲詰められる商品が出るという。
もともと上記の商品群、フラッシュメモリのシェアは日本が握っていた。東芝が開発し、日本メーカーが市場の大部分を握っていたところ、台湾メーカーのシェアが上昇してきた。ATP社の商品はもともとハイエンドユーザー向け(プロ向け)だったが、現在はデジカメを使用する人にはもちろん、ワンセグ携帯で画像を携帯に保存する人など、知る人ぞ知る商品になっている。「防水、防塵など構造的な工夫は勿論、故障もかなり少ない」。
高橋氏は決して秋葉原に足しげく通うような人間ではなく、大学も文系だ。
「中学までは勉強ができた」と言うが、高校を卒業してから受難の季節がやってきた。2浪をする。現役は早稲田、慶応、上智。1浪目も早稲田、慶応、上智。1浪目ならレベルを落とせば良かったのに「自信過剰だった」らしい。結局、2浪目に突入し「朝起きて、公園でパンとコーヒーを買って、見晴らしのいい公園で食べて、近所の図書館に通う生活」に突入する。
「2浪目は全然勉強しなかった」。危機意識は勉強の量ではなく受験校に反映された。早慶、上智よりもレベルを下げた結果、2浪目の受験は成功し山梨の都留文科大学に入学する事になる。本人曰く、「一人暮らしがしたかったから」との動機。
大学では「牧歌的な毎日」だった。「大学は勉強しなかった」。“は”ではなく“も”では? アルバイトはAVショップ。アダルトグッズを含めた商品の発注もしていた。日々のイマジネーションのなかでこの時一大発明をする。
「ポップも作ってたんだけど、そこにボッキンメータを書いた。寸評も添えて」。このボッキンメータというのはX軸を時間、Y軸を勃起指数にAVを捉えた画期的なものだった。事実、類似のものは現在のエロ本にも見られるが高橋氏の発明と出版社の発明、どちらが先だったかは定かではない。DVDの売れ行きを激増させた。
大学の専攻は地域経済論だった。無理矢理つなげると、小さいところではAVショップ、アカデミックには地方都市の研究をし、卒業。就職は「山梨と東京の往復が面倒臭かったから」との比較的安易な理由でバイク便会社に営業職として入社する。ここでは新規開拓営業を主とするが、官公庁、及び某メーカーの大型案件を獲得する実績をつくる。順調に仕事を進めたが「転職するきっかけは結婚だった」。
「2年前のゴールデンウィークに友達と旅行に行って、俺はべろべろに酔っぱらって寝ちゃったんだ。そしたら寝てる間に友達が彼女を結婚話に持っていったみたいで帰ってきたら結婚の話が出てきた」。某大手IT企業も内定をもらっていたが、ATPに就職したのは縁だった。「今の会社の社長が親父の高校の友達だった。履歴書を預けてくれればいいところを紹介するよ、って言われたんだけど、そのままATPに誘われた」。
「きれいに言えば、台湾人は関係性を大事にする人たちだから、何も縁もゆかりもない新人より、社長の高校の同級生の息子っていうのはよかったんじゃないかな」。
結構、適当ですね、と言うと「ほいほいシリアスなところを見せて同じ分類の人と話を分かつ人もいるけど、俺はそうじゃないと思う。自分の事は自分で切り拓く、人に言っても自分自身の事はしょうがないじゃん」。と言う。「嫁とも合致するのはそこの部分」。
「悩まないようにしてる。躁鬱を作らないように。ボッキンメータで言うと売れないDVDみたいな」。高橋氏は今の成長期の仕事に対して「自分の波が緩やかなところに仕事の波がでかいから楽しい。両方の波の高さをどう上げるか。波の上がる時はエキサイティングだし、下がる時は考えるよ」と語る。今ある既存のマーケットを翻す仕事は並大抵の事ではないと思う。「バイク便では値段の事が営業のすべてだったけど今は違う。技術者さんとも話さないといけないし、半導体の勉強もしなきゃいけない」。
「自分を保ちつつ、前向きに考えていれば、なるようになるもんだよ。これは2浪をして思った」。と、言う。もうちょっとしっかりしてくれたらな、という言葉があるが、その、もうちょっと、を表面に出さず、自分自身の中で解決しようとしているところに、なにか、高田純次のような、ダンディズムを感じる。
結果は物語っている、いい加減ではない事を。メモリ業界の動向も気になるが、高橋氏の人生のボッキンメータの先行きも気になる。中身カラカラの外見重視よりも、外見は飾らない、中身の深さを感じさせない、中身重視のスタイルがいい加減さのダンディズムを醸していた。
タバコ
(HOPE SUPER LIGHT)
嫁に去年中に止めろと言われたが止めてない。
【略歴】1979年6月2日生、神奈川県川崎市在住、アメリカ、ミシガン州出身→富山(幼稚園)、昭島(小学校)、八王子(中学校)→東京都立町田高等学校→河合塾→自宅浪人→都留文科大学文学部社会学科→某大手バイク便→ATP【星座】双子座【血液型】B型【家族構成】嫁【趣味】パソコンいじり・野球・バスケ【好きな食べ物】酒(芋焼酎)・その周辺のつまみ・チーズ【嫌いな食べ物】納豆・オクラ・マヨネーズ【お気に入りスポット】新宿の立ち飲み屋・ロマンスカー【尊敬する人】白洲次郎【座右の銘】隠忍自重【好きなタイプ】マスメディアに出てくる可愛いと言われている女の子全般【嫌いなタイプ】メニューをすぐに決められない奴【子どもの頃の夢】忘れた












